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2025.01.28

大阪体育大学アナリスト養成講座 阪神、バレー日本代表アナリストらが情報収集?分析手法を伝授

 大阪体育大学スポーツ科学部は1月26日(日)、「アナリスト養成講座」を開講し、外部の方や学生ら約100人が受講しました。
 スポーツアナリストは選手やチームのパフォーマンスをデータに基づいて向上させる「情報戦略の専門家」です。収集したデータを分析し、見えない課題を「見える化」することで、勝利への道筋を支える重要な役割を担い、スポーツ現場で年々需要が高まっています。講座では、プロ野球阪神タイガース、バレーボール男子日本代表のアナリストらが具体的な活動事例を紹介しました。

外部の方、学生ら約100人が受講


★データがスポーツの未来を切り拓く
 大阪体育大学は、2024年度に体育学部がスポーツ科学部へと生まれ変わりました。その背景として、従来は経験やカンに頼っていたスポーツの指導が大きく変化し、現在はデータベース、エビデンスベースに基づく分析力、課題解決能力、クリティカルシンキングが求められている点が大きく、2025年度からデジタルスポーツ論を新たに開講します。アナリスト養成講座はアナリストに必要とされる基礎的な知識や思考力を修得することが目的で、昨年に続いて実施されました。

三島隆章スポーツ科学部長。「本学ではスポーツを科学する視点を重視している」

ファシリテーターの沼田薫樹講師。「アナリストはいくら稼ぐ?」と際どい質問も


★大阪体育大学テニス部 岡村修平さん(大阪体育大学助教)
 講座では、パネリスト3人が講義した後、各クラブの学生アナリスト4人が活動を報告しました。ファシリテーターは、ゲームパフォーマンス分析、測定評価などが専門のスポーツ科学部?沼田薫樹講師が務めました。
 ゲームパフォーマンス分析が専門領域の岡村修平助教は、監督を務めるテニス部女子での活用事例を報告しました。テニス部女子では、各部員が自ら自分の試合をアプリで分析することを重視しているほか、リーグ戦に向けて5~6人の分析チームによるスカウティング(相手チームの分析)を実施しているといいます。岡村助教は「あくまでデータはデータであり、量的なデータは質的分析を用いて解釈する必要がある。選手への伝え方、情報の提供の仕方を工夫することも重要だ」と説明しました。

岡村修平助教。「学生が自分で自分のプレーを分析することが重要」


★バレーボール男子日本代表 行武広貴さん(元日本代表アナリスト)
 行武広貴さんは2008年、パナソニック?パンサーズ(現大阪ブルテオン)に入団。同年の北京五輪から昨年のパリ五輪まで17年間、男子日本代表のアナリストを務めました。アナリストの活動には情報の収集、加工、伝達の3段階があり、行武さんは「アナリストは信頼できる正確な情報を集めることがまず第一。次に独自のエッセンスや味付けを加えて、最後に自分で『ここが大事だ』という分析結果を相手に伝えることが大切だ。生成AIの発展、導入が加速する時代に、これからアナリストをめざす人は、AIに負けない独自の味付けをして収集した結果をアウトプットできるようになってほしい」と話しました。

行武広貴さん。「データの分析ではAIに負けない独自の味付けを」


★阪神タイガース 横山知紀さん(チーム運営部アナリスト)
 横山知紀さんは2019年阪神タイガースに入団。2023年からチーム運営部(1軍)アナリストを務めています。横山さんは野手の担当としてバットスピードのデータの測定や映像撮影などをもとに資料を作成し、選手の要望に応じてデータや映像を提供しています。「突出した能力や感覚を持ったプロ選手をリスペクトし、プロ(感覚)に対してはプロとしての分析で応えることが重要」という。また、アナリストに求められる資質として、多くの球団が「コミュニケーション能力」を挙げていると説明しました。

横山知紀さん。「アナリストに必要な資質はコミュニケーション能力」


★バスケットボール、バレーボール部男女?学生アナリスト
 3人の講義に続き、各クラブの学生アナリスト4が報告しました。バスケットボール部男子?竹下翔太さん(体育学部2年、西城陽)は「相手チームのセットプレー、選手の特徴をスカウティングして勝利に貢献できた」、同女子?中埜優さん(体育学部3年、香里ヌヴェール学院)は「昨年のアナリスト講座をきっかけに女子バスケットボールWリーグのトヨタ紡織サンシャインラビッツでインターンシップを経験し、選手、監督への情報の伝え方など多くのことを学んだ」と話しました。バレーボール部男子?酒井耀さん(体育学部3年、三田西陵)は「相手チームの攻撃パターンを分析して守備施術を提案し、チームの1部昇格に貢献できた」、同女子?宮内こころさん(体育学部3年、誠修)は「相手の速い攻撃に対するディフェンス、ブロックシステムの強化、コンビパターン数を増やすなどの対策?分析をし、これまでリーグ戦で勝てなかった3大学を破ることができた」などと報告しました。

バスケットボール部男子?竹下翔太さん

バスケットボール部女子?中埜優さん

バレーボール部男子?酒井耀さん

バレーボール部女子?宮内こころさん


 質疑応答では、分析結果が選手の感覚など主観と違った場合、分析を素直に受け入れてもらえているのかなどの質問に、行武さんは「トップ選手には受け入れてもらえないこともある。選手をリスペクトして歩み寄るなど、一人ひとり違うアプローチを取った」、横山さんは「選手は比較的データを受け入れてくれるが、ベテランの指導者はこれまでデータに接する機会が少なく、アプローチが難しい。時間をかけて話を聞いてもらっている」などと答えていました。

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